
まず、HubSpotの標準ワークフロー機能で「できること」と「できないこと」を整理しましょう。
標準のトリガーやIf/Then分岐では、「固定値」との比較は可能です。
これは、「プロパティA vs 固定された数字」の比較です。
一方で、苦手なのが「動的な値(プロパティ)同士」の比較です。
このように、比較対象の数字がコンタクトや取引ごとに異なる場合、標準機能では条件分岐を作ることができません。Operations Hub Professional以上のプランでカスタムコードを書けば実現可能ですが、エンジニアのリソースが必要となり、多くのマーケターやセールスOpsにとってはハードルが高いのが現状です。
カスタム コード アクションを利用することで、HubSpot APIを通じてオブジェクトのプロパティーを直接参照したり、のプロパティーを取得・設定することが可能です。これにより、ワークフロー内でカスタム コードを使って柔軟にプロパティーの値を操作でき、API経由でのプロパティー管理や出力フィールドの制御も実現できます。
なぜ、固定値ではなく「プロパティ同士を比較したい」というニーズがこれほど多いのでしょうか。それは、ビジネスの現場では「相対的な評価」が必要不可欠だからです。
顧客ごとに「予算」や「期待値」は異なります。一律に「100万円以上ならアラート」とするのではなく、「その顧客の予算を超過したらアラート」というように、相手の状況(プロパティ値)に合わせた柔軟な自動化が求められます。
入力ミスを防ぐために、「値引き額」が「承認された上限額」を超えていないかなど、2つの入力項目を突き合わせてチェックするニーズがあります。これを自動化できれば、承認フローの手戻りを大幅に削減できます。
「先月」と「今月」の数値を比較することで、良くなっているのか悪くなっているのかを判断したいケースです。単なる数値の記録ではなく、変化の「方向」をトリガーにしてアクションを起こす(例:利用頻度が下がった顧客にだけクーポンを送る)ことが可能になります。
今回ご紹介する「数値比較アクション」を活用することで、どのような業務改善が可能になるのか、具体的なユースケースを3つ紹介します。
ワークフローで数値比較アクションを使用して、プロパティーを設定し、比較条件を入力し、結果を確認して次のアクションを選択して進める流れを簡単に実現できます。
取引(Deal)オブジェクトにおいて、「受注金額」プロパティと、「外注費予算」プロパティを比較します。
もし 受注金額 < 外注費予算 (つまり赤字リスク)となった場合のみ、自動的にマネージャーへ承認申請チャットを飛ばす、あるいは取引ステージを「要確認」へ移動させるといったリスク管理が可能になります。
HubSpotスコアとは別に、自社独自の「行動スコア」と「属性スコア」を持っている場合。
「行動スコア」が「属性スコア」を上回ったタイミング(=熱量は高いが、属性的にはターゲット外かもしれない層など)を検知し、インサイドセールスではなくマーケティングメールでの育成ルートに回す、といった高度な振り分けが実現します。
カスタムオブジェクトで在庫管理をしている場合、「注文数」と「現在庫数」を比較します。
注文数 ≦ 現在庫数 であれば「出荷指示」へ進み、そうでない場合は「入荷待ち」ステータスに変更して調達部門へ通知する。こうしたロジックを組むことで、HubSpotを簡易的な受注管理システム(OMS)のように活用できます。
HubSpotのワークフロー機能を活用すれば、日々の業務プロセスを自動化し、効率化を図ることができます。ここでは、HubSpotでワークフローを作成する基本的な流れをご紹介します。
まず、ワークフローの目的と対象を明確にしましょう。たとえば「新規リードへのフォローアップメールを自動送信したい」「取引が成立したら営業担当者にタスクを割り当てたい」など、業務に合わせてワークフローのゴールを設定します。
次に、HubSpotのダッシュボードから「ワークフロー」をクリックし、「ワークフローを作成」を選択します。ここで、コンタクトベース、取引ベース、会社ベースなど、目的に応じたワークフローの種類を選択してください。
ワークフローの種類を選択したら、トリガー(開始条件)を設定します。たとえば「フォーム送信時」「取引ステージの変更時」など、特定のアクションやデータの変化をトリガーにできます。
続いて、ワークフロー内で実行したいアクションを追加します。アクションには、eメールを送信、タスクを作成、プロパティー値を更新、データを他のシステムに連携するなど、さまざまな選択肢があります。必要なアクションを選択し、各アクションの詳細を設定してください。
すべての設定が完了したら、ワークフローを有効化します。これで、設定した条件に基づいて自動的にアクションが実行されるようになります。HubSpotのワークフロー機能を使いこなすことで、日々の業務を大幅に効率化できるはずです。
HubSpot標準機能の壁を突破するために開発されたのが、「Number Comparison Action」というサードパーティ製アプリです。
このアプリを導入すると、ワークフローのアクション選択画面に、「2つの数値を比較し、結果を出力する」という専用のアクションが追加されます。
は次の手順で設定します。
複雑な数式やコードは不要です。直感的なUIで設定が完了します。
たったこれだけで、「Aさんの予算」と「Aさんの実績」といった、レコードごとに異なる動的な数値比較が可能になります。
カスタムワークフローの詳細設定はこちら
ワークフローを作成した後も、継続的な管理が重要です。HubSpotのワークフロー管理機能を活用し、常に最適な自動化を維持しましょう。
まず、ワークフローの実行状況を定期的に確認し、想定通りにアクションが動作しているかどうかをチェックします。ワークフローのダッシュボードでは、各ワークフローの進捗やエラーの有無が一目で分かるようになっています。エラーが表示された場合は、すぐに内容を確認し、必要に応じて設定を修正してください。
また、業務内容や運用フローの変更に合わせて、ワークフローの内容を編集することも大切です。ワークフローの編集画面から、アクションの追加・削除や条件の変更が簡単に行えます。これにより、常に最新の業務プロセスに基づいた自動化を実現できます。
不要になったワークフローは、システムのパフォーマンス維持のためにも削除しておきましょう。削除前には、ワークフローの設定内容をバックアップしておくと安心です。HubSpotでは、ワークフローの設定をエクスポートして保存することも可能ですので、万が一の障害時にも迅速に復旧できます。
このように、ワークフローの管理を徹底することで、HubSpotのワークフロー機能を最大限に活用し、業務の効率化と自動化を継続的に推進できます。ワークフローの運用状況を定期的にご確認くださ い。
今回ご紹介した「マーケティングイベント 自動レコメンドアクション」は、HubSpotの可能性を広げる一例にすぎません。
重要なのは、「HubSpotの標準機能でできないから諦める」のではなく、「カスタム開発によって実現する」という選択肢があることです。
HubSpotは、APIを公開しており、非常に柔軟なカスタマイズが可能です。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、HubSpotの仕様とAPIの両方を深く理解した専門的な開発力が必要となります。
もし、あなたがHubSpotを使っていて「この機能さえあれば、業務が劇的に改善するのに」「このシステムと連携できれば、データ活用が次のレベルに進むのに」と悩んでいるなら、その「あったらいいな」を諦める必要はありません。
その「できない」を「できる」に変える開発リクエストを、専門家に相談してみませんか?
今回ご紹介したアクションは、まさにそうしたHubSpotのカスタマイズを専門とする株式会社Tech-Fatherによって開発されたものです。
同社は、HubSpotのカスタムワークフローアクション開発や、外部システムとのAPI連携など、HubSpotの「かゆいところ」に手が届くソリューションを提供しています。
