
HubSpotのCRMでは、「関連付け」を活用することで、さまざまなオブジェクト同士やアクティビティーとの関係性を柔軟に管理できます。たとえば、コンタクトと会社、会社と取引、あるいは会社同士など、異なるオブジェクト間のレコードを関連付けることで、顧客や案件の全体像を立体的に把握できるのが大きな特徴です。
HubSpotの関連付け機能は、単に「紐付ける」だけでなく、関連付けエンドポイントを使ってレコードやアクティビティー、レコード間の関連付けを作成・取得・更新・削除することができます。さらに、関連付けスキーマエンドポイントを利用すれば、サポートされている関連付けタイプの一覧を表示したり、独自の関連付けタイプを作成したり、レコード間の関係性にラベルを割り当てることも可能です。
たとえば、「このコンタクトはどの会社に所属しているのか」「この会社はどの取引と関係があるのか」といった情報を、HubSpotの関連付けを使って一元管理できます。これにより、営業やマーケティング、カスタマーサポートなど、さまざまな部門で顧客情報を有効活用できるのです。
HubSpotの関連付け機能を正しく理解し、活用することで、オブジェクトのレコード同士の関係性を自在に設計でき、より高度なCRM運用が実現できます。
HubSpotの関連付けには、「単一ラベル」と「ペアラベル」という2種類のラベルが存在します。これらのラベルは、レコード間の関係性を明確に表現するために使われます。たとえば、「担当者」「購買担当」など、関係の種類ごとにラベルを付与することで、同じオブジェクト間でも多様な関連付けを管理できます。
関連付けタイプは、HubSpotの管理画面や関連付けスキーマAPIエンドポイントから作成することが可能です。各オブジェクトペア(例:コンタクトと会社、会社と取引)ごとに、最大10個までの関連付けタイプを作成できます。これにより、ビジネスの実態に合わせて柔軟に関係性を設計できるのが特徴です。
HubSpotのワークフロー機能は非常に強力で、特定の条件を満たしたレコードに対してプロパティを更新したり、メールを送信したり、あるいは「新しい関連付けを作成」したりすることは得意です。
しかし、「既存の関連付けを、ワークフローで自動的に解除する」というアクションは、標準機能として搭載されていません(※記事執筆時点)。
これは非常に大きな課題です。例えば、何らかのミスで1,000件のコンタクトが誤った取引レコードに関連付けられてしまったとします。これを修正しようとした場合、標準機能の範囲内で取れる手段は限られています。
各レコードの詳細画面に移動し、右側のサイドバーにある関連付けカードに移動し、「×」ボタンを押して関連付けを削除します。これを1,000回繰り返す必要があります。これは現実的ではありません。途方もない時間と労力がかかり、その過程で新たなヒューマンエラーが発生するリスクもあります。 2. APIを利用して開発する:
HubSpotのAPIを使用して関連付けを削除することが可能です。APIを使用して関連付け解除を自動化できますが、これには専門的なプログラミング知識と、APIを叩くための環境構築、そしてテストが必要です。マーケターやセールスオペレーションの担当者が、思いついたその日にサッと実行できるものではありません。
つまり、「簡単」かつ「大量」に「関連付けだけを解除したい」というニーズに応える関連付け解除機能が、標準のHubSpotには欠けているのです。
「関連レコードを全て解除したい」場合の主な目的は、特定のトリガー条件が満たされた際に、コンタクトと取引、会社、チケットなど他のレコードとの関連付けを自動的に解除または削除し、データの整合性や運用効率を保つことです。
では、具体的にどのようなシーンで「関連レコードを全て解除したい」というニーズが発生するのでしょうか。次に、単なるオペレーションミスだけでなく、データのライフサイクル管理やシステム連携の観点からも、この機能は不可欠です。
最も多いのが、CSVインポート時の設定ミスや、外部ツールとの連携設定の誤りによって、大量のレコードが「意図しないオブジェクト」に関連付けられてしまうケースです。
例えば、本来「会社A」の会社レコードに紐づくべき10,000人のコンタクトが、設定ミスですべて「会社B」の会社レコードにも紐づいてしまった場合などです。このとき、どちらの会社レコードがプライマリー会社として設定されているかによって、コンタクトの主な参照先が決まります。プライマリー会社は、コンタクトレコードにおいて主要な関連会社として扱われ、デフォルトで参照される役割を持ちます。この「誤った紐付き」だけを断ち切りたい場合、レコードそのものを削除するわけにはいきません(コンタクト情報は残したい)。「関係性」だけをリセットしたいのです。
ビジネスモデルの変更や、営業プロセスの刷新に伴い、過去のデータ構造が整理されたい場合があります。
例えば、「過去3年以上前の『失注』取引とコンタクトの関連付けが解除され、コンタクトのタイムラインが現在の商談だけに集中される」といったケースです。レコード自体はログとして残されますが、現在進行形の営業活動の邪魔にならないよう、関連付け(表示)からは外されたいというニーズです。
SalesforceやJira、その他基幹システムとHubSpotを連携させている場合、同期エラーやデータ不整合が発生することがあります。
一度連携をリセットし、正しいマッピングで再同期を行いたい場合、HubSpot側に残っている古い関連付けが邪魔になることがあります。一度すべての関連をクリア(解除)にし、クリーンな状態で外部システムから正しい関連付け情報を流し込み直したいという場面で、この「一括解除」機能は救世主となります。
個人情報保護の観点から、特定の活動履歴や対応履歴(チケットなど)と個人の紐付きを解消する必要に迫られることもあります。レコード自体を完全に削除する前に、まずは「個人」と「事象」のリンクを切り離すことで、データの匿名性を高めたり、閲覧権限のコントロールを行いたいという高度なガバナンス要件にも対応できます。
標準機能では手動でやるしかない、API開発はハードルが高い。そんな八方塞がりの状況を打破するのが、**HubSpotのサードパーティアプリ(Custom Workflow Action)**を活用する方法です。
今回ご紹介するソリューションは、HubSpotのワークフローに**「Unassociate all related records(関連レコードを全て解除する)」**というカスタムアクションを追加するものです。
このカスタムアクションの使い方や設定手順については、実際の操作画面を使った動画ガイドもご用意しています。動画では、ワークフローへの追加方法や実行手順をわかりやすく解説していますので、初めての方でも安心して導入できます。
このアクションを利用することで、以下のようなことが可能になります。
この機能を利用するために、コードを書く必要は一切ありません。通常のHubSpotワークフローを作成する手順の中に、一つのステップを追加するだけです。
大まかな流れは以下の通りです。
たったこれだけのステップで、何十時間もかかっていた手作業が一瞬で終わります。
このカスタムアクションの具体的な導入方法や、詳細な仕様については、以下のページで詳しく紹介されています。設定時には、通知やレポート送信先としてe メールアドレスを指定することで、処理完了後にe メールでレポートや通知を受け取ることができます。また、typeIdやIDは数値で指定されており、カスタムラベルの種類や関連付けのタイプを識別する際には数値を確認してください。実際にどのような画面で設定を行うのか、イメージを掴むためにもぜひご覧ください。
▼ 詳細・導入はこちら
HubSpot ワークフローで関連レコードを一括解除する方法
今回ご紹介した「マーケティングイベント 自動レコメンドアクション」は、HubSpotの可能性を広げる一例にすぎません。
重要なのは、「HubSpotの標準機能でできないから諦める」のではなく、「カスタム開発によって実現する」という選択肢があることです。
HubSpotは、APIを公開しており、非常に柔軟なカスタマイズが可能です。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、HubSpotの仕様とAPIの両方を深く理解した専門的な開発力が必要となります。
もし、あなたがHubSpotを使っていて「この機能さえあれば、業務が劇的に改善するのに」「このシステムと連携できれば、データ活用が次のレベルに進むのに」と悩んでいるなら、その「あったらいいな」を諦める必要はありません。
その「できない」を「できる」に変える開発リクエストを、専門家に相談してみませんか?
今回ご紹介したアクションは、まさにそうしたHubSpotのカスタマイズを専門とする株式会社Tech-Fatherによって開発されたものです。
同社は、HubSpotのカスタムワークフローアクション開発や、外部システムとのAPI連携など、HubSpotの「かゆいところ」に手が届くソリューションを提供しています。
