
HubSpotワークフローの基本的な仕組みは、「トリガー(起点)」と「アクション(実行)」の連鎖です。例えば、「コンタクトAさんがフォームを送信した」(トリガー)ら、「Aさんにサンキューメールを送る」(アクション)といった形です。
この仕組みの主体は、常に「ワークフローに登録されたコンタクト(この例ではAさん)」です。ワークフローはAさんのプロパティ情報を参照したり、Aさんに関連付けられた会社や取引の情報を利用したりすることは得意です。
しかし、この「Aさん」基点の仕組みこそが、「見えない壁」を生み出す原因でもあります。
ワークフローがAさんについて実行されている最中に、「Aさんとは直接関連付けられていない、データベース内の別のコンタクトBさん」の情報を検索し、その結果を利用することは標準機能では非常に困難です。
例えば、BtoBマーケティングで考えてみましょう。ターゲット企業(仮にX社とします)の担当者Aさんが、初めて資料をダウンロードしたとします(ワークフロートリガー)。この時、マーケターとしては「X社にはすでに他に接触済みの担当者BさんやCさんがいないか?」を即座に確認し、もしBさん(既存顧客)がいれば「Aさんには手厚いフォローを」、もしCさん(商談中)がいれば「Aさんの情報を営業担当に即時連携」といった対応を分けたいはずです。
標準機能では、「Aさんの会社のプロパティ」を参照することはできても、「Aさんと同じ会社(X社)に所属する、Aさん以外の全コンタクト」をワークフロー内で動的にリストアップし、その人たちのステータス(顧客、商談中など)を判別して処理を分岐させる、といった複雑な操作はできません。
HubSpotには「リスト」機能があり、「特定の条件に合うコンタクト」を抽出できます。しかし、ワークフロー内でこのリスト機能を「検索エンジン」のように使うことには限界があります。
アクティブリストは条件に合うコンタクトを自動で更新し続けますが、ワークフローのアクション(例:「IF/THEN分岐」)で参照できるのは、あくまで「今ワークフローを実行しているコンタクト」が「そのリストに属しているか否か」です。
ワークフローの「途中」で、「今この瞬間の、特定の複雑な条件(例:過去3ヶ月以内にウェビナーAに参加し、かつ役職がマネージャー以上で、特定の製品ページを閲覧した人)」に合致するコンタクト群をデータベース全体から検索し、その「検索結果の件数」や「見つかったコンタクトのIDリスト」を使って、次のアクションを動的に決定する...といった高度な処理は、標準機能の守備範囲外となります。
これにより、「ワークフローの途中でリアルタイムの状況に基づいたデータ集計を行い、その結果で処理を分岐させる」という、データドリブンな自動化が妨げられてしまうのです。
では、なぜマーケターはワークフロー内で「コンタクト検索」を行いたいのでしょうか。それは、この機能が実現できれば、これまで手動で行っていたり、あるいは諦めたりしていた高度な施策を自動化できるからです。
ユーザーが求める「マーケティングイベントのレコメンド」は、この最たる例です。例えば、コンタクトAさんが「春の新製品発表ウェビナー」に登録したとします(トリガー)。ここで、単に「ウェビナーのリマインドメールを送る」だけでは不十分です。
もしワークフロー内で「Aさんと同じ業種、同じ役職のコンタクトで、過去に同様の製品ウェビナーに参加した人たち」を検索できたらどうでしょうか。さらに、「その人たちが他にどんなコンテンツをダウンロードし、最終的にどの製品を購入したか」というデータを検索できたら?
その検索結果(例:「Aさんと類似の顧客は、ウェビナー後に事例資料Bを読み、製品Cを契約する傾向がある」)に基づき、Aさんに対して「ウェビナーご参加ありがとうございます。A様と似た課題をお持ちだった企業様の事例資料Bはこちらです」といった、極めて精度の高いレコメンドを自動で送信できます。
これは、標準機能のように「Aさん」の行動履歴だけを見るのではなく、データベース全体の「他人」の成功パターンを検索し、それを「Aさん」に適用するという、一歩進んだパーソナライゼーションです。
BtoBにおいて、アプローチは「個人」ではなく「企業(アカウント)」単位で考えます。ある企業のキーマンAさんが契約を締結した(トリガー)とします。これは絶好のクロスセル・アップセルのチャンスです。
この瞬間、ワークフローが自動で「Aさんと同じ会社に所属する、まだ接触していない(あるいは商談に至っていない)別部門の担当者」を検索します。そして、見つかったコンタクト(Bさん、Cさん)に対して、「A様の部門での導入事例」をフックにした別のアプローチメールを自動送信したり、インサイドセールスチームに「別部門への横展開タスク」を自動で作成したりできます。
これにより、アカウント内でのカバレッジ(接点)を迅速かつ自動的に拡大し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を図ることが可能になります。
マーケティング施策だけでなく、社内の業務プロセス自動化にも威力も発揮します。例えば、Webフォームから問い合わせが入るたびに(トリガー)、「送信されたメールアドレスのドメイン(@company.com)」や「会社名」をキーにして、既存のコンタクトや会社データを検索します。
もし重複するデータが見つかれば、「重複の可能性があるコンタクト」として担当者にマージ(統合)を促すタスクを自動生成します。もし見つからなければ、新規コンタクトとしてクリーンな状態で登録処理を進めます。
これにより、CRMの命であるデータの重複や「ゴミ」の発生を防ぎ、常にクリーンなデータベースを維持するためのプロセスを自動化できます。
これまで述べてきた課題は、HubSpotの標準機能の「壁」でした。しかし、HubSpotの真の強みはその高い「拡張性」にあります。APIを通じて、サードパーティ開発者や自社のエンジニアが、標準機能にはない独自の「カスタムワークフローアクション」を追加できるのです。
今回、冒頭の動画でご覧いただいたのは、まさにこの課題を解決するために開発された「Contact Search Action(コンタクト検索アクション)」というカスタムワークフローアクションです。
このカスタムアクションは、ワークフローの任意のステップに組み込むことができ、データベース内のコンタクトを自由に検索する機能を提供します。
重要なのは、この「検索結果」をワークフロー内でどう活用するかです。
search_results_count)を、標準の「IF/THEN分岐」アクションで使います。「検索結果の件数が0より大きい」場合と「0の場合」で、その後の処理を完全に変えることができます。このように、標準機能では「Aさん」起点でしか動けなかったワークフローが、「Aさん」を起点に「データベース全体」を検索し、そのリッチな情報を「Aさん」へのアクションにフィードバックできるようになるのです。これにより、自動化できる施策の幅は劇的に広がります。
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今回ご紹介した「Contact Search Action」は、HubSpotの可能性を広げる非常に強力なツールです。しかし、企業のビジネスプロセスは千差万別。このアクションだけでは、あなたの会社の固有のニーズを100%満たせないかもしれません。
「コンタクトではなく、カスタムオブジェクトを検索したい」「HubSpot内のデータではなく、外部の基幹システムと連携してデータを検索・照合したい」「検索するだけでなく、検索結果を特定のロジックで加工・集計して、別のオブジェクトに書き込みたい」
こうした「パッケージソリューションの限界」を感じることもあるでしょう。
もし、あなたのマーケティング施策や業務プロセスのボトルネックが、HubSpotの特定の「機能不足」にあるのなら、それをカスタム開発で補うという選択肢があります。HubSpotの強みは、まさにその高い拡張性と柔軟なAPIにあるのです。
日々の手作業、スプレッドシートへのエクスポートとインポート、目視でのデータ確認...。それらの非効率な業務は、もしかしたら「貴社専用のカスタムワークフローアクション」を一つ開発するだけで、すべて自動化できるかもしれません。
「こんなワークフローが作りたいが、標準機能ではできない」「あのデータさえワークフローで取れれば、この施策が自動化できるのに」「日々の手作業をワークフローで自動化したいが、機能が足りない」
もし、あなたがHubSpotの運用でこのような壁にぶつかっているなら、諦めるのはまだ早いです。Tech-Fatherは、まさにこうしたHubSpotの「かゆいところ」に手が届くカスタムワークフローアクションの開発を専門としています。「Contact Search Action」のような汎用的なものから、貴社の業務プロセスに最適化された完全専用のカスタムロジックまで、幅広く対応が可能です。
あなたの「やりたかったこと」を、まずは私たちに聞かせていただけませんか?標準機能での回避策、既存のアドオンの活用、あるいは完全なカスタム開発まで、貴社の課題を解決するための最適なソリューションをご提案します。
今回ご紹介した「マーケティングイベント 自動レコメンドアクション」は、HubSpotの可能性を広げる一例にすぎません。
重要なのは、「HubSpotの標準機能でできないから諦める」のではなく、「カスタム開発によって実現する」という選択肢があることです。
HubSpotは、APIを公開しており、非常に柔軟なカスタマイズが可能です。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、HubSpotの仕様とAPIの両方を深く理解した専門的な開発力が必要となります。
もし、あなたがHubSpotを使っていて「この機能さえあれば、業務が劇的に改善するのに」「このシステムと連携できれば、データ活用が次のレベルに進むのに」と悩んでいるなら、その「あったらいいな」を諦める必要はありません。
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今回ご紹介したアクションは、まさにそうしたHubSpotのカスタマイズを専門とする株式会社Tech-Fatherによって開発されたものです。
同社は、HubSpotのカスタムワークフローアクション開発や、外部システムとのAPI連携など、HubSpotの「かゆいところ」に手が届くソリューションを提供しています。
