カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、見込み客が経験する一連の行動、思考、感情の変化を時系列に整理し、製品やサービスの購入プロセス、および意思決定に至るまでの物語を「見える化」する手法です。これにより、顧客との各接点を明確にし、適切な場所とタイミングで最適なマーケティング施策を展開できるようになります。

顧客が商品やブランドを認知し、関心を抱き、購買意欲を喚起され、最終的に購入や契約といった具体的な行動に至るまでの一連の体験が、まるで「顧客が旅をしているかのよう」と表現されたことから、「カスタマージャーニー」と名付けられました。従来、このプロセスはリードが段階的に減っていく直線的な「ファネル(漏斗)」モデルで捉えられていました。しかし、デジタルチャネルの爆発的な普及により、現代の購買行動はもはや線形ではなく、はるかに複雑で多様な経路を辿るようになっています。
顧客は、ブログ記事を読み、ソーシャルメディアで評判を確認し、ウェビナーに参加した後、一時的に離脱し、数ヶ月後にリターゲティング広告経由で再訪問するといった、予測困難なパスを辿ります。HubSpotにおけるカスタマージャーニーアナリティクスは、この断片化された「点(タッチポイント)」を意味のある「線(ストーリー)」として結びつけるための高度な分析フレームワークです。それは単に「どのページを見たか」という履歴データに留まらず、「どのような順序と組み合わせの相互作用が、最終的な目標達成(収益)に貢献したのか」を解明するための羅針盤としての役割を果たします。
上の図が示すように、顧客の行動と、その背後にある心理状態を時系列に整理し、視覚的に表現したものが「カスタマージャーニーマップ」です。多くの企業は、理想的な顧客の動きを想定したジャーニーマップを作成しますが、実際の顧客がその想定通りに動いているかを検証する確固たる手段が不足していました。HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクス機能は、この「理想的なジャーニーマップ」と「実際の顧客データ」との間のギャップを埋めるために開発されました。これにより、企業は主観的な直感や経験則ではなく、実証されたデータに基づき、マーケティング予算の配分やコンテンツ戦略の最適化を精密に行うことが可能になります。
マーケティングにおけるカスタマージャーニーの必要性
マーケティング戦略においてカスタマージャーニーの概念が不可欠であるのは、主に以下の理由によります。

多様化する顧客の行動と心理を理解し、的確なアプローチを実現するため
現代マーケティングの究極的な目標は、顧客のインサイトを深く掘り下げ、多様なチャネルを通じて、彼らが必要とする情報を最適なタイミングで提供することにあります。
デジタル化がまだ未発達で、メディアがテレビ、ラジオ、新聞といった一方通行のコミュニケーション手段に限られていた数十年前までは、企業側が顧客像やタッチポイントを想定するだけで十分でした。しかし、今日では顧客のニーズはもちろんのこと、情報収集や購買行動が著しく多様化しており、顧客のインサイトやそれに基づいた行動を正確に把握することが極めて困難になっています。特にスマートフォンの普及は、この傾向をさらに加速させました。近年では、AIをはじめとするテクノロジーの飛躍的な進化が続いており、今後も購買行動のさらなる変化やマーケティング手法の多様化が進むことが予測されます。
実際に、当社HubSpotの独自調査によると、「過去1年間でマーケティング部門における目標達成の難易度が高まっている」と感じているマーケティング従事者は、全体の73.1%にも上ることが判明しました。
このように、時代とともに変化し、複雑化する顧客の行動や心理を包括的に理解するためには、全体像を俯瞰できるカスタマージャーニーが、マーケティング部門のみならず、営業やカスタマーサービスなど、顧客との接点を持つ全ての部門にとって不可欠な存在となっています。
カスタマージャーニーを通じて顧客の行動と心理を明確に可視化することで、最も効果的なアプローチやプロモーション戦略を考案できるようになります。
「個客」に最適化されたマーケティングを実現するために
個々の顧客、すなわち「個客」のニーズに合わせたパーソナライズされたマーケティング戦略を展開できることは、カスタマージャーニーが現代ビジネスにおいて不可欠とされる大きな理由の一つです。デジタル技術と情報通信技術(ICT)の高度な発展により、企業は顧客に関する膨大な量の高品質なデータを入手できるようになり、その行動を高精度で把握・分析することが可能になりました。
さらに、マーケティングオートメーション(MA)ツールやアドテクノロジーの進化が、様々なチャネルを横断しながら、顧客一人ひとりに最も効果的なマーケティング施策をタイムリーに展開することを可能にしています。
これにより、顧客が商品やサービスを購入するまでの各タッチポイントにおける体験や、各フェーズでの感情を細かく設計できるようになり、結果としてユーザー満足度の飛躍的な向上を目指せるのです。
カスタマージャーニーは、顧客の行動原理や潜在的な思考を深く理解し、それに基づいた戦略を構築するための、まさに羅針盤とも言えるツールです。
マーケティング施策の成果と改善点を明確にするため

カスタマージャーニーは、実施した施策の効果測定と継続的な改善プロセスにおいても、極めて重要な役割を果たします。
HubSpotが実施した独自の調査データによると、マーケティング担当者の94.4%が「マーケティングROI(投資収益率)を高めるためには効果測定が不可欠である」と回答しています。しかし、実際にその重要性を認識している担当者のうち、効果測定を実践できているのはわずか53.1%に過ぎないという実態があります。
もしデータ分析の専門知識が不足しており、効果検証の実施に課題を抱えている場合は、一度マーケティング戦略の出発点であるカスタマージャーニーに立ち返ることが有効です。施策の進行中に、当初想定したカスタマージャーニーと現状で得られている効果を比較検討することで、具体的な問題点や乖離を抽出しやすくなります。
カスタマージャーニーの計画と実際の顧客行動にズレが生じた際は、その都度ジャーニーマップを更新し、精度を高めていくことが肝要です。
加えて、競合他社の動向や市場全体の変化を定期的に調査し、その結果をカスタマージャーニーに反映させることで、個別の施策改善に留まらず、外部環境まで考慮に入れたより戦略的な改善が図れるようになります。
HubSpotカスタマージャーニーアナリティクス(CJA)とは?その開発背景と戦略的必然性
HubSpotがカスタマージャーニーアナリティクス機能を導入した背景には、従来のマーケティング分析ツールの根本的な限界と、HubSpot自身の製品開発哲学における重要な転換という、二つの大きな要因が存在します。この機能は単なる報告ツールではなく、CRMデータに深く根ざした高度な顧客行動分析エンジンとして設計されています。
「分断されたダッシュボード」問題からの脱却
これまでのマーケティング現場では、ウェブサイトのアクセス解析にはGoogle Analytics、メールマーケティングにはMailchimpのような専用ツール、顧客関係管理にはSalesforceなどのCRMといった具合に、目的別に複数の異なるツールを使い分けるのが一般的でした。
この「分断されたツール環境」では、「特定のブログ記事を閲覧した顧客が、その後どのメールキャンペーンに反応し、最終的にどのくらいの期間で商談成立に至ったのか」といった、ツールを横断するような行動の因果関係を正確に追跡することは極めて困難でした。従来の環境では、マーケティング活動の成果(ROI)を明確に証明するためには、複数のCSVデータをExcel上で手作業で結合し、膨大な時間をかけて分析する必要があったのです。
HubSpotは、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub、CMS Hubといった主要な機能を、単一のプラットフォーム(共通データベース)上に統合するという独自の戦略を展開してきました。カスタマージャーニーアナリティクス機能は、この「統合されたデータベース」という強力な基盤を最大限に活用し、顧客の初期接点から営業による成約、さらにはカスタマーサポートの対応履歴まで、顧客とのあらゆるインタラクションを一気通貫で可視化するために開発されました。
ラストタッチアトリビューションの限界とジャーニー分析の重要性
従来の分析手法における大きな課題の一つは、最終的な顧客接点のみを評価する「ラストタッチアトリビューション」への偏りでした。このモデルでは、コンバージョン直前のタッチポイント(例えば、デモ申請フォームなど)が成果の全てであると見なされます。
特にB2B分野のように、検討期間が長期にわたり、複数の関係者が意思決定に関わるケースでは、ラストタッチモデルは実際の顧客行動を正確に反映しません。例えば、ある見込み客が数ヶ月にわたり複数の啓蒙的なコンテンツを閲覧し、信頼を築いた上でデモを依頼したとします。しかし、このモデルでは、その間のコンテンツの貢献は無視され、最終的なデモ申し込みページのみが評価の対象となります。
このような評価方法では、本来重要なはずの認知フェーズや教育フェーズのコンテンツに対する投資が軽視され、結果として誤った事業戦略に繋がりかねません。HubSpotは、この中間プロセスの不透明性を解消し、コンバージョンに至るまでの全タッチポイントの貢献度を「シーケンス」として明確にするために、カスタマージャーニーアナリティクス(CJA)を導入しました。これにより、企業は「どのリソースが最終的な成約に寄与したか」だけでなく、「どのリソースが顧客のジャーニーを促進したか」を深く理解することが可能になります。
ファネルからフライホイールへの哲学転換
HubSpotは、2018年頃に従来のビジネスモデルである「ファネル」思考から、「フライホイール(弾み車)」という新たな哲学へと転換しました。ファネル型モデルが顧客獲得で終了するのに対し、フライホイール型モデルは、高い顧客満足度が新たな顧客紹介やアップセルといった持続的な成長を生み出す循環的なアプローチを提唱します。
カスタマージャーニーアナリティクス機能が、「コンタクト(マーケティング)」データだけでなく、「ディール(営業)」や「チケット(サービス)」データも分析ソースとして活用できるのは、このフライホイールの思想に基づいています。これは、単に購入前のプロセスだけでなく、購入後のオンボーディングやサポート体験全体において、顧客が「摩擦(Friction)」を感じるポイントや離脱する要因を特定し、顧客生涯価値(LTV)の最大化を支援することを目的としています。
HubSpotカスタマージャーニーアナリティクスの機能概要と技術的アーキテクチャ
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクスは、単なる表形式のレポートツールではなく、CRMデータと連携した高度な行動分析エンジンです。このセクションでは、その核となる技術的な仕様と機能の狙いを詳しく見ていきます。
サンキーダイアグラムによる流動の可視化
この機能の際立った特徴は、サンキーダイアグラム(Sankey Diagram)による視覚的な表現方法です。サンキーダイアグラムは、異なるプロセス間を流れる「量」を「帯(バンド)」の太さで直感的に示す図です。
- ノード(Nodes): 顧客ジャーニーにおける各ステップ(例:「料金プランの閲覧」「問い合わせフォームの送信」など)を示す垂直のブロックです。
- リンク(Links): 各ノード間を結ぶ帯状の流れで、その幅がその経路を通過したコンタクト(またはディール)の数に比例します。
- ドロップオフ(Drop-offs): 次のステップへ進まなかった顧客層は、流れが途切れるか、あるいは特定の「離脱」ノードへと向かう形で可視化されます。

このような視覚化手法が採用された意図は、単なる数値データ(表形式)では見過ごされがちな「ボトルネック」を、ユーザーが直感的に把握できるようにするためです。例えば、「製品概要ページ」から「無料トライアルへの登録」へと続く帯が著しく細い場合、そのポイントがジャーニーにおける最も重要な改善領域であることが瞬時に理解できます。
柔軟なデータソース選択:戦略的視点の切り替え
カスタマージャーニー分析機能は、企業が目指す分析目標に応じて、3つの主要なオブジェクトを基盤としてレポートを作成できる柔軟性を提供します。この機能はHubSpotの各Hub(Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub)のEnterpriseプランに組み込まれています。
- コンタクト (Contacts):主にリードの獲得経路、マーケティングコンテンツの効果測定、そして見込み顧客(MQL)への育成パスの最適化を目的とします。Marketing Hub EnterpriseとService Hub Enterpriseで利用可能です。
- ディール (Deals):商談プロセスの加速、営業担当者の活動(電話や会議など)が成約に与える影響、および失注に至る要因の特定に焦点を当てます。Sales Hub Enterpriseで対応しています。
- チケット (Tickets):顧客サポートの解決フロー、問い合わせから問題解決までの道のり、そしてそれが顧客満足度にどう影響するかを深く掘り下げます。Service Hub Enterpriseで利用可能です。
この多角的な構造により、マーケティング部門は「リード生成」、営業部門は「パイプラインの健全性」、カスタマーサービス部門は「顧客の問題解決効率」といった、それぞれの責任範囲における主要な指標を効果的に分析できます。
詳細なイベントトラッキングと多様なデータポイント
分析の深さと精度は、追跡可能な「イベント」(顧客の行動ステップ)の豊富さによって大きく左右されます。HubSpotは、ウェブ上でのインタラクションだけでなく、CRM内の顧客活動データも統合されたイベントとして記録します。以下に、主要なイベントとその具体的な内容を詳述します。
Webおよびユーザーインタラクション系イベント
- ページ閲覧:特定のウェブページやコンテンツグループへのアクセスを記録します。未コンタクトの匿名ユーザー(Cookieで識別)の行動も追跡可能であり、コンタクト登録後に過去の匿名データを関連付ける「遡及的紐付け」をサポートします。
- フォーム:「表示(View)」、「入力開始(Interaction)」、「送信完了(Submission)」の3段階で追跡します。これにより、フォームを閲覧したが入力しなかったユーザー、入力を開始したが送信に至らなかったユーザー(フォーム離脱者)を明確に区別し、改善点を特定できます。
- CTA (Call-to-Action):ボタンやバナーなどのCTAの表示回数とクリック数を計測します。
- 広告 (Ads):HubSpotに連携された広告アカウント(Google Ads、LinkedIn Adsなど)経由でのユーザーインタラクションを追跡します。クリックだけでなく、広告のインプレッションからの流入も対象です。
営業およびコミュニケーション系イベント
- Eメール:マーケティングメール(開封、クリック、バウンス)に加え、個別のセールスメール(1対1のEメール)の開封や返信も追跡します。これにより、自動化されたナーチャリングから個別の営業アプローチへの円滑な引き継ぎと、その効果を評価できます。
- ミーティング:会議の予約、実施、キャンセル、および無断欠席(No Show)といったステータスの変更を詳細に追跡します。
- コール:架電の開始と終了時刻を記録します。通話時間や結果(接続状況、留守番電話など)に基づいたフィルタリングも可能です。
詳細なインタラクションとシステム内イベント
- ドキュメント: 営業資料(例:PDF)の閲覧開始から完了までの行動を追跡します。どの資料が潜在顧客に最後まで読まれたかを把握することは、B2Bセールス戦略を練る上で極めて貴重な洞察となります。
- シーケンス: 自動化されたセールスシーケンスへの登録状況、各ステップの実行、または登録解除といったステータスを詳細に把握することが可能です。
- メディア: HubSpot上でホストされている動画コンテンツや音声ファイルの再生状況(視聴開始、完了、途中離脱など)をトラッキングします。

出展:Hubspot. ジャーニーアナリティクスを使用してレポートを作成 . https://knowledge.hubspot.com/ja/reports/create-a-journey-report
HubSpot カスタマージャーニー分析の主要な仕様と利用上の留意点
効果的なレポートを作成し、正確なインサイトを得るためには、システムの技術的な制約を事前に理解しておくことが重要です。
- イベント分析の上限: 一つのレポートで処理できるイベントの総数は2,000万件までです。この数値を超過すると、システムはパフォーマンスを維持するために自動的に分析対象期間を短縮します(例: 直近1ヶ月間のみに調整)。特に2,001万件以上のイベントを含むレポートを設定した場合、自動的に日付範囲が1ヶ月に制限される点にご注意ください。
- ジャーニーステージ数の上限: 一つのカスタマージャーニーマップに設定できるステージは最大15個です。さらに、レポート全体で利用できるユニークなイベントタイプ(ステップの種類)の組み合わせも合計15種類という制限があります。例えば、15個のステージを配置し、それぞれ第1、第2、第3ステージに異なる5種類のステップを含めることで、合計15個のユニークな個別ステップを定義することが可能です。
- データ保存期間: 過去5年間までのデータを分析対象として利用できます。
- 静的リスト作成時のオブジェクト上限: ジャーニーアナリティクスから動的に生成される静的リストには、最大100,000個のオブジェクトを含めることができます。
- セールス活動の非対象性: ジャーニーレポートでは、連携されたツールからの電話記録やミーティングといった営業担当者による活動(セールスアクティビティ)は、分析対象としてカウントされません。
これらの制限事項は、HubSpotのCJA機能が、全ての過去データを網羅的にアーカイブする目的よりも、「最近の傾向や顧客行動のパターン」を発見・把握することに最適化されていることを示唆しています。
HubSpot カスタマージャーニーアナリティクスの詳細分析と他プラットフォームとの比較
HubSpotのカスタマージャーニー分析機能の真価を評価するには、市場に存在する他の分析ツール、特にGoogle Analytics 4 (GA4) やマルチタッチアトリビューション(MTA)ツールとの比較を通じて、その特性を明確にする必要があります。
HubSpot CJA vs. Google Analytics 4 (GA4) の比較
多くのマーケターから、「GA4の『経路データ探索』機能と、HubSpot CJAは何が異なるのか?」という質問が寄せられます。両ツールはサンキー図のような視覚化を提供しますが、その設計思想と「データが示す真実の根源(Source of Truth)」は根本的に異なります。
比較項目
データモデル
個人単位の識別 (Identity-Based)特定の「コンタクト(個人)」を分析の主軸とします。誰がその行動を起こしたかを特定し、その人物の属性(役職、所属業界など)と関連付けて深掘りします。
行動起点 (Event-Based)「イベント(ユーザー行動)」を分析の中心に置きます。データは匿名化・サンプリングされる傾向があり、個人の特定よりも全体的なトレンドやWebトラフィックのボリュームに焦点を当てます。
強み
ビジネス成果への直接的な貢献 (Revenue Clarity)Web上の行動を、実際の売上、商談の発生、サポートチケットの作成といった具体的なビジネス成果に直接結びつけて分析できます。B2Bビジネスや高単価商材に適しています。
ユーザー体験とトラフィックの最適化 (Traffic Intelligence)サイトのパフォーマンス、デバイス別の挙動、大規模な匿名トラフィックのサイト内回遊分析において優れた能力を発揮します。
統合性
メールの送受信、電話、営業メモ、さらにはオフラインイベントなど、Webサイト以外の多様な顧客接点を同一線上で分析することが可能です。
主にWebサイトおよびモバイルアプリ内のユーザー行動に限定されます(高度な連携を別途行わない限り)。
最終的に、HubSpot CJAとGA4は互いに競合するツールではなく、むしろ補完関係にあります。Webサイト全体のトラフィックの健全性やUI/UXの改善にはGA4を活用し、個々のリードが顧客へと成長するまでの「説得と育成のプロセス」を深く解明するにはHubSpot CJAを利用するのが、最も効果的な戦略と言えるでしょう。
カスタマージャーニー分析とアトリビューションレポートの比較
「カスタマージャーニーアナリティクス(CJA)」と「アトリビューション(貢献度評価)レポート」は、それぞれ異なる目的を持つ分析手法であり、しばしば混同されますが、その役割は明確に区別されます。
- アトリビューションレポート: 顧客獲得や売上達成に至るまでの「貢献要素の比重」を明らかにします。具体的には、「達成された売上100万円のうち、どのマーケティングチャネル(例:ウェビナーが30万円、メールが20万円)がどれだけ寄与したか」を金額的に評価し、主にマーケティング予算の最適配分に活用されます。
- カスタマージャーニーアナリティクス: 顧客がどのような「一連の行動」を辿って目標に到達したかを視覚的に捉えます。例えば、「ウェビナーに参加した顧客の8割が、その後、製品の導入事例ページを閲覧している」といった具体的な行動経路を把握し、ユーザー体験(UX)の改善や、より効果的な顧客育成(ナーチャリング)戦略の構築に貢献します。
HubSpotのプラットフォームを活用することで、これら二つのレポートを連携させることが可能です。「どの接点やチャネルが成果に最も影響を与えているのか(アトリビューション)」を特定し、「その重要な接点を顧客体験の中でいつ、どのように提供すべきか(カスタマージャーニー)」を戦略的に組み立てることで、顧客エンゲージメントとビジネス成果の最大化を図ることができます。
効果的なカスタマージャーニー構築のための6つの要素
質の高いカスタマージャーニーを策定するためには、以下の主要な6つの情報要素を深く理解し、整理することが不可欠です。
これらの各要素を明確に定義し、活用することで、より顧客の実態に即した、精度の高いカスタマージャーニーマップを描くことが可能になります。これら6つの項目の具体的な設計手法については、別途詳細な解説記事をご用意しておりますので、ぜひご参照ください。
カスタマージャーニーにおける各ステージでの主要な施策
一般的なカスタマージャーニーの設計では、顧客の購買プロセスを「認知」「興味・関心」「比較・検討」「行動」の4つの主要なフェーズに分類します。それぞれの段階において、顧客の心理やニーズに応じた最適なマーケティング施策を講じることが重要です。ここでは、各フェーズで実践可能な具体的な施策の一覧をご紹介します。
1. 認知フェーズ:ブランドや製品の存在を知ってもらうための戦略
顧客がまだ自社の製品やサービスを認識していない初期段階、いわゆる認知フェーズでは、以下のような多様な施策を通じて、ターゲット層へのリーチを拡大し、ブランドへの第一歩を踏み出してもらいます。
- SEOコンテンツ戦略
- ソーシャルメディア運用
- リスティング広告、ディスプレイ広告
- プレスリリース配信
- インフルエンサーマーケティングの活用
- Webサイトの戦略的構築
- 展示会やイベントへの出展
なお、カスタマージャーニーマップの策定時、特にこの認知フェーズにおいては、SEO(検索エンジン最適化)の要素を組み込むことで、潜在顧客の検索行動を捉え、効果的な接点を作り出すことが可能です。カスタマージャーニーとSEOを融合させた具体的な最適化手法については、別の専門記事で詳しく解説していますので、そちらも併せてご参照ください。
2.興味・関心フェーズ
この段階では、見込み客の関心を引きつけ、彼らの課題解決に役立つ情報を提供することが重要です。HubSpotカスタマージャーニーにおけるこのフェーズで効果的な施策は以下の通りです。
- 価値あるWebコンテンツ(ブログ記事、成功事例、役立つホワイトペーパーなど)
- 興味を深めるためのメルマガ配信
- ターゲット層に合わせたSNS広告展開
- 専門知識を提供するウェビナー
- リアルな交流を促すオフラインイベント
3.比較・検討フェーズ
顧客が具体的な解決策を探し、競合他社と比較を始める比較・検討フェーズでは、自社の優位性を明確に示し、信頼を築くための施策が不可欠です。HubSpotカスタマージャーニーでは、以下の施策が特に有効です。
- 詳細な情報を提供する資料請求
- 製品・サービスの価値を実感できる無料体験版
- 導入メリットを具体的に示す製品デモ
- 顧客の疑問を解消する個別相談会
- 信頼性を高める具体的な成功事例の公開
- 顧客の生の声を集めた口コミ
4.行動フェーズ
カスタマージャーニーの最終段階である行動フェーズでは、見込み客が顧客へと変わるための明確でスムーズな導線が求められます。HubSpotカスタマージャーニーの視点から、この決定的な瞬間に促進すべきアクションは以下の通りです。
- サービス利用のための正式な契約
- 求める商品への最終的な購入
- 価値あるサービスへの申し込み
- 最終的な疑問解消のための問い合わせ
カスタマージャーニーを成功に導く考え方とHubSpot CJAのベストプラクティス
これまでの解説を通じて得られた知識は、HubSpotカスタマージャーニーのマッピングを実践するための強力な基盤となるでしょう。さらに効果的で成果に繋がるカスタマージャーニーマップを構築するためには、成功へ導く戦略的な思考が不可欠です。本セクションでは、特にHubSpotのCJA(カスタマージャーニーアナリティクス)機能を最大限に活用し、ビジネス成長を加速させるための戦略的ベストプラクティスを深掘りして解説します。
顧客の深い願望を洞察する
HubSpotのカスタマージャーニーを効果的に構築し、顧客の行動、思考、感情のパターンを的確に予測するためには、その根底にある本質的なニーズを深く理解することが不可欠です。企業側が描く理想の顧客像と、実際の顧客が抱える切実な願望との間に認識のズレがあると、せっかく策定した施策の効果が薄れてしまう可能性があります。
顧客の本質的なニーズを捉えるには、彼らが「達成したいこと」や「解決したい課題」を「ジョブ(片付けるべき仕事)」として捉える「ジョブ理論」が非常に有効です。例えば、「自宅で美味しいコーヒーを淹れたい」と願う人であれば、「忙しい朝でも手軽に高品質なコーヒーでリラックスしたい」というジョブが見えてきます。
ジョブ理論を通じて顧客の真のニーズを明確に定義することで、売り手側の仮説と顧客が本当に求めているもののギャップを埋め、より響くアプローチを導き出せるでしょう。
現代の消費者は、多様な情報源から独自の判断で行動するため、従来の直線的なカスタマージャーニーの考え方では対応しきれないという声もあります。しかし、カスタマージャーニーそのものが無用になったわけではありません。もともと見込み客が限定された情報源から情報を得ていた時代から存在した概念であり、HubSpotのような先進的なツールを活用する現代においては、企業視点の一方的なものではなく、顧客体験を中心に据えた新たな視点でのカスタマージャーニー再構築が求められています。
現実に基づいた戦略的フレームワークを構築する
カスタマージャーニーを企業側の憶測や願望だけで設計してしまうと、往々にして失敗に繋がります。新規事業であれば見込み客、既存事業であれば既存顧客に対して積極的にインタビューやアンケート調査を行い、彼らのリアルな声や行動パターンに基づいて、実態に即したHubSpotカスタマージャーニーマップを構想することが成功への鍵となります。
反復的な効果測定と改善サイクルを回す
HubSpotカスタマージャーニーは、一度作成して終わりではありません。その本質は、施策の効果を継続的に検証し、そこから得られた学びを元に絶えず改善を繰り返してブラッシュアップしていくプロセスにあります。どれほど入念に初期設計を行ったとしても、運用を進める中で、想定通りの成果が得られないケースは少なくありません。
進行中の施策に対して適切な効果測定を行うことで、計画したカスタマージャーニーと実際の顧客行動との間に生じているズレを正確に把握し、迅速な軌道修正が可能になります。例えば、HubSpotのデータを用いて、リード獲得に成功しているタッチポイントや施策、あるいは顧客の離脱が発生しているボトルネックを特定し、それらを改善していくことで、顧客にとってより価値のある、スムーズな体験を提供できるようになります。
カスタマージャーニーは、HubSpotを活用したマーケティング施策の出発点であると同時に、常に立ち返り、最適化を図るべき羅針盤とも言えるのです。
「Map Before You App」:HubSpotツールに触れる前に仮説を構築する
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクスを最大限に活用するための最も重要な要素は、ソフトウェアを開く前に明確な戦略と仮説を立てることです。HubSpotのエキスパートやコミュニティが推奨するように、まずは物理的なホワイトボードや紙の上で、理想的なジャーニーマップを描き出すべきです。
- ステージの具体的な定義: 自社のビジネスにおける「認知」「検討」「意思決定」が、それぞれどのような顧客の状態や行動を指すのかを具体的に明確化します。
- 明確な仮説の設定: 「製品の無料トライアルに登録したユーザーは、その後、オンボーディングメール内の特定リンクをクリックするはずだ」といった具体的な顧客行動に関する仮説を設定します。
- HubSpotでの検証: HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクスを用いて、立てた仮説通りにユーザーが行動しているかを確認します。もし異なる動きが見られた場合は、パスファインダー機能などを活用し、ユーザーがどこへ逸れているのか、予期せぬ経路を辿っているのかを探ります。
いきなりHubSpotツール上で大量のイベントデータを追加しようとすると、情報が複雑になりすぎて意味のあるインサイトが見つけられない「分析麻痺(Analysis Paralysis)」に陥るリスクが高まります。戦略的なアプローチが不可欠です。
戦略的な全体像と精密なセグメンテーションの融合
HubSpotのマーケティング担当VPは、分析において「細部に過度に囚われず、全体から本質的な洞察(ビッグテイクアウェイ)を引き出すこと」の重要性を強調しています。具体的には、個々のブログ記事のパフォーマンスに終始するのではなく、「ブログコンテンツ全体へのエンゲージメント」という大きな括りで捉え、そこから次のコンバージョンステージへの移行率を俯瞰的に評価することが肝要です。一方で、分析の対象となる「誰(Who)」の定義は、極めて具体的に絞り込む必要があります。
- ペルソナ別分析: 決裁者(CxO層)と実務担当者では、彼らが閲覧するページや情報収集の順序が異なるのが一般的です。これらを一括りに分析すると、平均化されたデータが導き出され、本質的な洞察を見落とすリスクがあります。HubSpotの強力なリスト機能を活用し、特定のセグメントに特化した詳細なレポートを作成することが推奨されます。
- 結果別比較: 「失注したリード」と「成約に至った顧客」のジャーニーを比較することで、成功を促進する行動パターンや、離脱につながるボトルネック(例:成約顧客が共通して事例ページを閲覧している、など)を特定できます。これにより、より効果的なコンテンツ戦略や顧客体験の最適化が可能になります。
定性データとの統合による真のインサイト抽出
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクスは、顧客が「何(What)」をしたかという行動の事実を明確に示しますが、その行動の背景にある「なぜ(Why)」までは直接的に語りません。カスタマージャーニーアナリティクスで特定された主要な離脱点やコンバージョンポイントに対し、アンケート調査、ヒートマップ分析、顧客インタビューといった定性データを組み合わせることで、行動の動機や感情といった深層的なインサイトを獲得し、より効果的な改善策を導き出すことが可能になります。
例えば、カスタマージャーニーアナリティクスのデータから「料金ページでの離脱率が高い」という事実が判明したとします。この時、定性調査を併用することで、「価格設定が高すぎると感じられているのか」「料金プランの構造が複雑で理解しにくいのか」といった、具体的な離脱理由を深く掘り下げて特定することができます。
必須パスと任意パスの戦略的設定とパスファインダーの活用
カスタマージャーニーのレポートを作成する際、各ステップを「必須(Required)」として設定するか、「任意(Optional)」として設定するかの設計は、分析結果の精度と目的に大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。
- ジャーニーレポート(検証モード): このモードでは、事前に想定した特定のパス(例:製品ページ閲覧 → 資料ダウンロード → 問い合わせ)を顧客がどの程度辿っているかを検証し、その進行割合を測定します。主に、構築したマーケティングファネルの健全性を確認し、期待通りの顧客行動が実現されているかを評価するために活用されます。デフォルト設定では、指定された全てのステップが必須として扱われます。これにより、レポートは全てのステージを順序通り、かつ確実に経由したレコードのみを表示し、厳密なファネル通過率を把握できます。
- パスファインダー(発見モード): このモードでは、特定の重要なイベント(例:成約、特定コンテンツのダウンロード)を起点または終点とし、その前後に顧客が辿った経路を探索的に可視化します。これにより、予期せぬ成功経路や、見過ごされがちな離脱パターンを発見し、新たな仮説や改善の機会を見出すことが可能になります。パスファインダーにおいて特定のステージを任意とする場合は、設定ポップアップボックスの右上にある「任意」チェックボックスをオンにします。任意に設定されたステージは、最終コンバージョンに至った全体の割合に影響を与えつつも、厳密な順序を問わない分析を可能にします。ただし、ジャーニーの始点となる第1ステージと終点となる最終ステージは、分析の基準点であるため、任意に設定することはできません。
HubSpot カスタマージャーニーアナリティクスの具体的なユースケース(シナリオ別)
HubSpotカスタマージャーニーアナリティクスの持つ多岐にわたる可能性を深く理解いただくため、ここではビジネスモデル別に特化した具体的な活用シナリオを提示していきます。
B2B SaaS企業:フリートライアルから有料化への転換分析
SaaS企業にとって、無料トライアルから有料顧客への効果的な転換は、持続的な成長を実現する上で不可欠です。プロダクト主導型成長(PLG)モデルでは、ユーザーのアプリ内行動とマーケティング施策の連携が、この重要な移行段階を最適化する鍵となります。
- 設定例: ステージ1: 自社ウェブサイトへのアクセス(検索エンジン経由など) ステージ2: トライアル登録フォームの完了(無料利用開始) ステージ3: 導入支援メールの開封(オンボーディングコンテンツの閲覧) ステージ4: アプリケーションへの主要機能ログイン(特定のカスタムイベントで計測) ステージ5: 商談の発生(営業部門によるアプローチ)
- インサイト: オンボーディングメールを開封したユーザー群と未開封のユーザー群の間で、その後のアプリ利用頻度や商談への発展率にどのような差異があるかを数値で把握できます。これにより、オンボーディング施策が有料化プロセスにもたらす投資対効果(ROI)を明確に実証することが可能になります。
Eコマース:カゴ落ち(Cart Abandonment)のリカバリー
Eコマースビジネスにおいて、顧客が購入プロセスを完了する直前で離脱する「カゴ落ち」は、直接的な売上損失に繋がります。この現象を効果的に回復させる戦略は、収益改善に直結する重要な課題です。
- 設定例: ステージ1: 特定の商品ページへの訪問 ステージ2: 購買カートへの商品の追加 ステージ3: 決済手続きページでの離脱(購入プロセスの中断) ステージ4: カゴ落ち回復を促すメールの送信と、そのメールからの再訪問 ステージ5: 最終的な購入の完了(例:Shopifyなどの販売データと連携)
- インサイト: カゴ落ちメールを開封し、リンクをクリックしてサイトに戻ったユーザーのうち、実際に購入に至った割合(リカバリー率)を明確に測定できます。これにより、メールの件名、本文、提供される割引などのオファーが、どの程度購買意欲を再喚起する効果があるかをテストし、最適化を進めることができます。
イベントマーケティング:ウェビナーの費用対効果
ウェビナーはリード獲得やブランド認知向上に有効な手段ですが、その集客に投じた費用が最終的な商談や売上にどれだけ貢献しているかを把握することは、マーケティング予算の最適化に不可欠です。
- 設定例: ステージ1: オンライン広告のクリック(例:LinkedIn、Facebookなど) ステージ2: 専用ランディングページでの参加登録フォームの送信 ステージ3: ウェビナーイベントへの実際の参加(Zoomなどとの連携により計測) ステージ4: 関連営業資料の閲覧(資料ダウンロードやCRM上の活動記録) ステージ5: 最終的な商談の成立(受注に至った取引)
- インサイト: ウェビナーに登録したものの参加しなかったオーディエンスと、実際に参加したオーディエンスの間で、その後の商談化率や成約率にどれほどの差が生じるかを比較分析できます。さらに、広告チャネルごとにウェビナー出席率を分析することで、費用対効果の高いリードを生み出す媒体を特定し、マーケティング戦略を調整することが可能になります。
HubSpotカスタマージャーニーレポートの作成手順
HubSpotの強力なジャーニーアナリティクス機能を活用することで、顧客が企業と接触してから最終的な目標達成に至るまでの道のりを詳細に可視化し、レポートとして出力することが可能です。カスタマージャーニーレポートは、顧客がブランドと関わるあらゆる接点が、その後の行動にどのような影響を与えているかを包括的に理解する上で役立ちます。これにより、最も効率的なリード獲得チャネルを特定したり、各購買ステージにおける顧客(コンタクト)や商談(ディール)の進捗状況をリアルタイムで追跡したりすることができます。このレポートにおけるコンバージョン率は、設定された全ジャーニーステージを完了したコンタクトや取引の総数に基づいて算出されます。
既存のサンプルを活用したレポート作成
HubSpotが提供するテンプレートを利用してカスタマージャーニーレポートを作成する場合、以下のステップで進めます。
- HubSpotアカウントへログインし、「レポート」タブから「レポート」を選択します。
- 画面右上の「レポートを作成」ボタンをクリックします。
- 左側のメニューより「カスタマー ジャーニーレポート」を選びます。
- 「次へ」をクリックして進行します。
- 「サンプルレポートで開始」オプションを選択します。
- 作成したいレポートの目的に最も合致するサンプルをクリックします。
- 再度「次へ」をクリックします。
- 必要に応じてレポートの内容を詳細に調整します。
独自のカスタマージャーニーレポートを構築する
完全に新規のカスタマージャーニーレポートを一から構築する際は、以下の手順を実行します。
- HubSpotにサインインし、「レポート」セクション内の「レポート」へ移動します。
- 画面右上にある「レポートを作成」ボタンを選択します。
- 左サイドバーから「カスタマー ジャーニーレポート」を選んでクリックします。
- 「次へ」進みます。
- 左側のメニューで、「自分でジャーニーを作成」を選択します。
- 「プライマリー データ ソース」のドロップダウンメニューを開き、適切なデータソースを選択します。
- コンタクト(Marketing HubおよびService Hub Enterprise限定): 新規コンタクトがコンテンツ経由でどのように生成されたかを追跡する場合に選択します。
- 取引(Sales Hub Enterprise限定): コンテンツが新規取引の創出にどのように貢献したかを測定する場合に選択します。
- チケット(Service Hub Enterprise限定): サポートパイプラインにおけるチケットの進捗状況を把握する場合に選択します。
- 「最初のステージを追加」の項目で、「最初のステージイベント」ドロップダウンメニューから開始イベントを指定します。
- 「次へ」をクリックします。
- 左側のパネルに表示される「新しいステージを追加+」をクリックすると、ジャーニーのタイムラインが表示されます。
レポートのジャーニーステージを調整する
ジャーニーにステージを追加する際のダイアログボックスでは、以下の設定が可能です。
- イベントの追加:「全てのイベント」セクションで、各イベントにカーソルを合わせると、指定された期間における推定発生数が表示されます。その後、クリックすることでそのイベントをステージに追加できます。イベントを効果的に絞り込む方法も確認できます。
- 主要イベントの検出:カスタマージャーニーの特定ステージで最も多く発生しているイベントを特定するには、「上位のイベントを検索」チェックボックスを有効にします。この主要イベントの検索設定を詳細にカスタマイズするには:「イベント」タブで「編集」をクリックし、イベントの追加または削除を行います。完了後、「適用」をクリックします。「絞り込み」タブでは、数値を入力するかスライダーを調整して、検索結果として表示するイベントの数を変更できます。
- 経路発見(パスファインダー)機能:コンタクトをデータソースとして用いる顧客ジャーニーレポートを構築する際、パスファインダーツールを活用することで、手動入力なしにHubSpotが自動で顧客ジャーニーのステージを提案・定義してくれます。パスファインダースイッチを「オン」に切り替えます。リードが主要な成果にどのように到達するかを把握するには、「このステージより前の上位のパスを検索」を選択します。重要なマイルストーン達成後に何が起こるかを確認するには、「このステージの後で上位のパスを検索」を選択します。「イベント」タブでは、「イベント名」チェックボックスを選択・解除することで、提案されたイベントを編集できます。「絞り込み」タブでは、数値入力またはスライダー操作により、パスファインダーが推奨するステージの数を調整します。設定後、「保存」をクリックします。
- ステージの任意設定:ポップアップボックスの右上にある「任意」チェックボックスにチェックを入れると、そのステージはオプションとなります。コンタクトや取引が最終ステージに到達した場合、任意のステージを経由していても合計コンバージョン率に算入されます。ただし、最初のステージと最終ステージを任意に設定することはできません。
- ステージの必須設定:コンタクトや取引は、ジャーニーを継続するためにその特定のステージを通過する必要があります。デフォルトでは、すべてのステップが必須として設定されています。全てのステージが必須である場合、結果に表示されるレコードは、ジャーニーの全ての段階を経験したものとみなされます。
- 最終的に「保存」をクリックします。
- 作成されたステージは左側のタイムラインパネルに表示されます。必要に応じて、さらにステージを追加してください。
レポートのカスタマイズ:フィルターとプロパティー別の内訳
カスタマージャーニーレポートに目的のステージが組み込まれた後、レポートを実行または保存する前に、これらのステージを柔軟に調整し、独自の要件に合わせてカスタマイズすることが可能です。
フィルター
特定のイベントに絞り込みを適用するには、以下の手順を実行します。
- まず、対象のイベントを追加します。
- イベント名の隣に表示されるフィルターアイコンを選択します。
- [+フィルターを追加]をクリックし、適用したいフィルターを選んでから[適用]を押します。
補足: コンタクトが(例えばデータ移行によって)HubSpotにインポートされた際、コンタクトレコード作成ステージは、元のシステムでの作成日ではなく、HubSpotにインポートされた日付を基準とします。実際のコンタクト作成日に基づいてレポートを細分化したい場合は、[コンタクトレコード作成]ステージを外し、代わりに[コンタクトフィルター]オプションから[コンタクト作成日]プロパティーをご利用ください。
補足: [キャンペーン]フィルターは、以下の種類のステップでのみ機能します。
- 広告
- CTA(Call-to-Action)
- フォーム
- マーケティングEメール
- マーケティングイベント
- ウェブページ
カスタマージャーニーレポートで利用可能な一般的なフィルターに関する詳細情報はこちらで確認できます。
プロパティー別の内訳
イベントを追加した後、[分類条件: search]アイコンをクリックし、プロパティーを設定します。ジャーニーレポートでは、プロパティーの内訳を含めて最大10個のステージを組み込むことができます。
プロパティーに基づいたレポートの詳細な内訳は、以下の手順で設定します。
- [プロパティー別の内訳]ドロップダウンメニューを開き、分析したいプロパティーを選びます。レポート実行後、2つのステージ間における最も頻繁な経路が可視化されます。
- レポートに表示させたい結果の件数を指定します。
- [適用]ボタンを押して設定を確定します。
補足:1つのステージが複数のステップで構成されている場合、レポートにはそのステージ全体のコンタクトや取引の総数は表示されません。代わりに、個々のステップを完了したそれぞれの数が示されます。
レポートの実行とデータ保存
ステージ設定が完了したら、カスタマージャーニーの動向を可視化するためレポートを実行し、その結果を確認できます。
カスタマイズされたジャーニーレポートの表示と保存には、以下の手順に従ってください。
- 画面右上の「レポートを実行」ボタンをクリックすると、分析結果が表示されます。
- さらに特定のデータを深掘りしたい場合は、レポート上部に表示されるフィルター機能を活用してください。
- 右上の「レポートを保存」をクリックし、適切なアクセス権限を設定した後、「保存」を選択します。
注意事項:
- コンタクトや取引が特定のジャーニー段階に表示されるのは、それらに関連するイベントが設定されたステージの順序と一致している場合に限られます。
- ジャーニーレポートでは、個別のイベント発生数ではなく、特定のジャーニーパターンを完了したコンタクトまたは取引の一意な数が集計されます。
- 「匿名の訪問者を含める」機能は、ジャーニーレポート内で選択された特定のステップにのみ適用可能です。これにより、匿名ユーザーを含むステップと含まないステップを組み合わせることができます。
- 連携サービスを介した通話やミーティングなどの営業活動は、ジャーニーレポートの分析対象には含まれません。
- ジャーニーアナリティクスから静的リストを生成する場合、最大10万件のオブジェクトをリストに含めることができます。
カスタマージャーニーマップ作成への挑戦
見込み客の購入プロセスに応じた最適な施策を見出す上で、カスタマージャーニーは非常に有効なツールです。顧客の行動、思考、そして接触点を具体的に想定することで、効果的な戦略の立案、潜在的な課題の特定、そして優先順位付けが可能になります。
ジャーニーマップの精度を高め、計画した施策を成功に導くためには、ペルソナやフェーズを含む6つの主要な構成要素を深く理解することが不可欠です。見込み客のニーズを彼らの行動と思考に基づいて正確に捉えることが、成功の鍵となります。確立された原則に従ってマッピング作業を進め、定期的な効果検証を通じて内容を更新していくことで、見込み客をより快適な「旅」へと導く、的確な施策を提供できるでしょう。
カスタマージャーニーマップの作成に初めて取り組む方には、テンプレートの活用をお勧めします。HubSpot独自のテンプレートをご希望の場合は、関連する記事をご参照ください。
まとめ
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクス機能は、マーケティング、営業、カスタマーサービスの各部門が共有できる、顧客理解のための「共通言語」を提供します。これは、個別のKPI(ページビュー数やメール開封率など)のみを追跡する組織から、顧客体験全体を包括的に最適化する企業へと変革を遂げるための強力な手段となります。
この機能を導入する真の価値は、単に魅力的なグラフを作成することではなく、そこから得られた洞察を行動(オーケストレーション)へと転換することにあります。例えば、特定のページでの離脱率が高い場合はチャットボットを導入して質問に対応する、高成約率を誇るメールがあればその内容を自動化ワークフローに組み込む、あるいは質の低いリードをもたらす広告キャンペーンは予算を停止するなど、具体的な改善策へと繋げることが極めて重要です。
「測定(Measure)→仮説(Hypothesize)→実行(Orchestrate)→再測定」というサイクルを継続的に回すことが、HubSpotが提唱するフライホイールを加速させ、データ駆動型組織への移行を促す唯一のアプローチです。本稿が、皆様のHubSpot活用およびカスタマージャーニーの最適化に貢献できれば幸いです。
よくある質問
カスタマージャーニーとは何ですか?
[Hubspot カスタマージャーニー]とは、潜在顧客が貴社の製品やサービスを知り、最終的に購入に至るまでの一連の過程における行動、思考、感情の変化を時系列で可視化したものです。この顧客の歩みを深く理解することで、各接点において最も効果的なコミュニケーションやサポートを提供し、顧客体験を向上させるための戦略を練る上で不可欠な概念です。
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクス(CJA)を使うと何ができますか?
HubSpotのCJAは、実際の顧客データを基に、見込み客がブランドを認知してから成約に至るまでの「旅」の道のりを視覚的に深く掘り下げて分析できる強力なツールです。ウェブサイト上の行動だけでなく、メールのエンゲージメント、営業チームとのやり取り、カスタマーサポートの問い合わせ履歴など、HubSpot CRMに集約されたあらゆる顧客接点を統合的に追跡します。これにより、コンバージョンに貢献した重要なステップや、顧客が離脱してしまったボトルネックを正確に把握することが可能です。
HubSpot CJAとGoogle Analytics 4 (GA4) の違いは何ですか?
HubSpot CJAは「個人特定ベース」のアプローチを取り、特定のコンタクト(個人)に焦点を当て、その人物の属性情報と紐付けて収益に直結するインサイトを提供します。対照的に、GA4は「イベントベース」のアプローチで、匿名化された広範なデータからウェブサイト全体のトラフィック動向やユーザーエクスペリエンスの最適化に強みを発揮します。両者はそれぞれ異なる強みを持つため、ビジネスの目的に応じて使い分けることで、より包括的な分析が可能になります。
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクスを利用するために必要なライセンスは何ですか?
HubSpotのカスタマージャーニーアナリティクス機能は、主にMarketing Hub、Sales Hub、またはService Hubの「Enterpriseプラン」の契約で利用可能です。StarterプランやProfessionalプランでは、この高度な分析機能は提供されていません。
HubSpotのカスタマージャーニーレポートは、匿名ユーザーの行動も記録できますか?
はい、特定条件下において可能です。HubSpotでは、ブラウザのCookieを活用して匿名でサイトを訪れたユーザーの行動を追跡しています。もしそのユーザーが後日フォーム送信などを通じてコンタクトとして登録された場合、それまでの匿名状態での閲覧履歴や行動データも自動的にそのコンタクトレコードに統合されます。レポートの設定オプションで「匿名訪問者を含める」を選択することで、コンタクトになる前のユーザーのジャーニー全体を詳細に分析することが可能になります。
カスタマージャーニーレポートを作成する際の主な制約は何ですか?
主な制約として、HubSpotのカスタマージャーニーレポートでは、1つの分析で最大2,000万件のイベント総数、最大15個のステージ、そして最大15種類のユニークなステップの組み合わせまでがサポートされています。また、データの保持期間は最長5年間と定められています。もしイベント数が上限を超過した場合、システムは自動的に分析対象となる期間を短縮して調整する場合があります。
カスタマージャーニーを成功に導くための効果的なアプローチとは?
カスタマージャーニーの成功には、まず見込み客が抱える根本的な課題や欲求を深く掘り下げて理解することが不可欠です。企業側の憶測に頼るのではなく、既存顧客へのインタビューなどを通じて「現場の声」に基づいたリアルなジャーニーフレームワークを構築することが極めて重要です。さらに、一度作成したジャーニーは完成ではなく、効果測定と継続的な改善を繰り返すことで、常に最適な状態へとブラッシュアップしていく姿勢が求められます。HubSpotのCJA(Customer Journey Analytics)のようなツールを活用することで、データドリブンなPDCAサイクルを効率的に回し、真に成果を出すジャーニーを実現できます。






